悪役レスラーは笑う−「卑劣なジャップ」グレート東郷−

森達也著『悪役レスラーは笑う−「卑劣なジャップ」グレート東郷−』を読んだ。
第二次大戦直後のアメリカマット界でトップヒールになった”血笑鬼”グレート東郷
素顔を書いたドキュメンタリー。膝までのタイツに下駄履き(田吾作スタイル)で
試合前に日本的な儀式をうやうやしく行い、不意打ちや反則を繰り返す
”卑劣なジャップ”スタイルは、その後、上田馬之助マサ斉藤ザ・グレート・カブキ
ザ・グレート・ムタといったアメリカでトップヒールになったレスラー達に
少しずつ時代に合わせて”神秘的”などといった要素もカスタマイズされ
進化・継承されてきたが、オリジナルはあくまでもグレート東郷のもの。
僕は中学時代”ジュードー・ヒロシマ”というリングネームで、白地に黒い斑点の
マスクを被り(黒い雨を表している)、原爆で両親と兄弟を失い自分も顔に火傷を負い
放射能の後遺症で痛みを感じない体になった、憎きアメリカを復讐する、という
ギミックで、アメリカマット界を恐怖の底に落としてやろうと、真剣に考えていた時期
があったが、そんな若き日の妄想もグレート東郷の存在があったからこそ生まれたもの。
この本の中では、グレート東郷力道山の活躍した時代背景や、それぞれの出生の
秘密から、彼らにとってまた我々にとってナショナリズムとは何ぞや?ということを
問いかけている。岩波新書から出版されていることからも分かるが、他のプロレス
関連書籍とは視点が変わっていて秀逸。昭和からのプロレスファンやとにかく
アンダーグラウンドなものが好きで好きでたまらない人にはとってもオススメ。