義父の遺言

バイタリティとユーモアに溢れ心から尊敬していた義父が亡くなってしまった。
私とは親子の関係になってから10年足らずだが、いくつか印象深い出来事があった。
義父は2年前に喉頭ガンの手術を受けたのだが、ストレッチャーに乗せられ手術室に運ばれていく時に、立ち会っていた義母、義姉、妻、私に言葉をかけてくれた。
手術によって声を失ったので、それは義父が自分の声で話した最後の言葉だと思う。
自分の妻、娘達に向かってそれぞれの名前を呼びながら、「愛しているよ」 と
そして私には、「(妻の名)をよろしく」 と。
私はそれが、義父が手術から生還できないことも覚悟して、遺言として言ったのだと思った。
それから2年、一時元気を回復したものの今夏の終わりからじょじょに衰弱し、とうとう逝ってしまった。
今回は遺言らしい遺言を残さぬまま逝ってしまったので、2年前の手術の時の言葉が結局遺言になってしまったように思う。
そして、これほどすてきな遺言は無いと思う。